何故だったのか18
嵐の中、「やめようか」と五文字、口に出しただけなのに、嫌にはっきり聞こえた気がする。のっぴきならない状況のテントの中で、さらに気持ちが萎みだす。
まずい。そう思ったとき、「やっぱもう少し粘ってみようか。」という一言で、テント内のテンションも少し戻る。 やっぱり皆、諦めたくないのだ。 相変わらず雨風は強い。 近くの岩陰までテントを移動させて風を凌ごうだとか、状況を変えようと話し合う。そんななか、テント裏に岩が沢山落ちていることに誰かが気付いた。 これをペグの上に載せれば・・・! 少し小降りになった雨の中、人力で岩を運ぶ。皆で力を合わせて、20分も運んだだろうか。難破船のようだったテントは、フライをピンと張り、びくともしなくなっていた。テントの中が沸き立つ。雨風も段々と収まりつつあった。 パーティは再びOFFからONへ。一度仕舞った機材を再び出す。机を広げる。アンプとスピーカーを繋げる。電気を通す・・・汗だくになりながら着々と準備を進める。もうパーティを止めたくは無い。組み立てていくと、スピーカーが一つ、宿に置き忘れられていることに気が付いた。しょうがない・・・と思いつつスピーカーを取りに行ってもらうことにした。 宿からテントを張った場所まで、結構距離がある。 5分、10分。気が急いていたお陰で、まだかまだかと待っていた。 そして30分、40分・・・まだ戻ってこない。電話しても相手は出ない。 心配しながら待つと電話が入った。 「浜辺に戻って来れませーん。」 |