何故だったのか17
雨脚強まるなか、テントを組み立てていた皆は中へ避難・・・いやテントの中でも遭難中だった。テントは節々が歪んでいる。聞くと、風がピュッと吹いてテントを吹き飛ばしてしまったという。
砂浜に打ち込んだペグは、幾ら深く打ち込んでも踏ん張ってはくれない。正に砂上の楼閣だ。 僕が一人合流したところで、自然の力に為す術など生まれるはずもなく、皆でテントの壁を握り締め、ひたすら励ましあう。 「がんばれ!」 「風が弱くなってきた!」 「やっぱ嘘、無理!」 自信と弱気の間でみんな揉まれている内に、何だか楽しくなってきた。 ここでテントを保てなかったら風邪決定、機材も濡れて諸々アウト。 テント内の十数人、難破船High。まじで運命共同体。 ・・・とは言うものの、雨風は強くなる一方。段々テントも突風に捲られて、段々雨が中に入ってくる。先行き真っ暗な所で、それまで雰囲気を支えていたムードメーカーが口を開く。 「どうする?」 とうとう訊かれた。どうする?って。皆消耗していた。 質問は「もうやめようか?」と訊いていた。 究極の選択。判断する人間は僕しかいない。 少し考えて、「やめようか」と、そう答えた。 金のことより何より、この瞬間が一番苦しかった。 |