Fly higher than Mt.Everest/ The moon above dancefloor
或る意味、十本の指に入るほどの経験をした昨日。
それを文章にしてみる試み。 (序) このシチュエーションに気付いて、「時々あることがまたきたか?」と疑ったのも束の間の考えで吹っ飛んだ。鳥肌が立った。鳥肌が立ったのは冬だってのにTシャツで居たからじゃない。自分の思考と意識が深い所へ潜って行くのを客観的に見て、酷くびっくりしたからだ。もしかしたら一瞬、自分のことを恐ろしいとさえ思ったかもしれない。それを確認したあと、更なる深みに僕は嵌っていったんだ。 (本) 僕の目はまるで映画を撮るカメラ。 僕の脳は映像を語るナレーター。 DJブースの裏にある鏡を経由して見えるミラーボールが拡散させる赤い光。踊る人、時折僕と「カメラ」の間を横切っていく人、淡々と回すDJ、そして鏡なのか中空なのかを眺め、足の高い椅子にちょい猫背で座っている僕。 そんな映像を視覚で捕らえ、感覚を混ぜて、思考を出力。思考を出力・・・とは言っても、出力されたものは結局今のところ、思考で完結しているのだけど。(これ、覚えておいて後で映画にしたら面白いだろうなあ)って思う。 そんなこんなを考えている内に、そこにいる個々の人間に意識が移る。個々の人間に物語の対象が譲り渡されたかのような錯覚が一瞬あって、感覚を握っていたのは結局僕で、譲り渡したフリをしただけだった。ただ単に焦点無限大で捉えていた、使い捨てカメラのような僕の目が、一眼レフの如く、とある一点に焦点を絞っただけだった。 椅子から立ち上がって、動き出すカメラ・僕。 DJは淡々とレコードを回している。 赤い光が壁をくるくる、音も無く回っている。ある週末の夜。ここは何処か(というか上海なんだけど)、何処でもない。だって意識の中は何処でも無いし、言葉は何語でも良いし(僕の場合は日本語。なんならテレパシーだって良い。あ、むしろテレパシーのが都合良い)。仮に自分の意識という範囲から解き放ったところで、「音楽の流れる、時間も太陽も見えない暗い箱」という状況に、場所という意味づけが必要なのだろうか???何処でもいいじゃん。 このパーティーはアフター。外は完全、既に朝。眠いのか何なのか薄目になってみたり、また目を開けて視界をはっきりさせてみたり。まどろみとの境界を一歩踏み越えてはまた戻り、ブラックアウトしていく視界や、眠さや面倒くささからカクンッと頭を下に向けて、見る。首の下に連なる、腿の上に置いた手、重力に逆らえずに潰れた太もも、足元には昨日おろしたばかりの靴。さっき誰かに踏まれた左のつま先が気になる。(踊るときに履いている靴ってすげえ傷むよな・・・) DJの仕草は淡々としているけれど、かかる音から段々と終わりに近づいていることが解る。起きる時間が遅かったのか騒ぐ時間を間違えている30を目前にしていそうなお姉さん、若しくはおばさん。どっちで呼ぶべきか迷ってしまう女の子(女の子?!少なくともこいつは明らかに「子」じゃねえな)。そんな中国人が、微妙に合ってない合いの手を入れている。 「、フゥー!」 「、イェイ!」 んんんん?微妙。 合いの手の先には知った顔がマイクを渡されフリースタイルをしている。今日は言葉が特別にキレている。パーティー難民。本当にあれはなりたくない。 Party nomaddddddddd...ゴアが思い起こされる。原付で走り回ってパーティを探して、無くて。でも偽警官なんて要らないモノだけは有って。椰子の木があるくせに夜は結構寒くて。偽南国? ・・・意識が別に行ってしまった。話を戻そう。 一緒に来た奴がキレキレのフリースタイルをしているとそれを見て触発されたコニーが歌い始める。人の目をひく見た目とはまた別の角度で人を驚かせる高音で、歌う。コニーに対しても中国人は合いの手を入れていた。相変わらず合いの手の前には奇妙な「、」が合ったけど、気にする素振りもない。僕は、この、心から言っているんじゃなくて、何となく言っているだけであろう(と感じた)、「イェー」や「クール」なんて言葉が驚くほどペラペラに聴こえて、どうしたらこんなに薄っぺらな言葉が出せるんだろう?と驚いた。 時計を見ると午前7時前。ああ、やっぱり。もうあと少し。 2人のマイクリレーと、奇妙な合いの手が暫く続いて、止まった。 「あと10分。」 中国人の女が言うけれど、あと10分は無かった。ってか、普通、無い。いや、無くてよかった? 外へ出たら既に白天。ゆっくりながらも既に一日は始まっている。目を細めて、曇り空のもと、ケアしとかないと生み出されてきそうな色々なマイナス思考を、「あーーーーーーーー!!!」と心で唸って抑えこむ。 デッキでちょいと休んで・・・と思ったが、休むことも許されず外へ。 中国人の女はこれからパーティー。ホームパーティーとのたまう。 僕はついていけない。 タクシーに乗った。 あとは平凡な日曜の朝と心地よい眠りが待っているだけだった。 家に着けば・・・ちょっと何か食べて、寝よう。 |